気配を感じ、そちらを見やると、ばばーん、クモ氏!
やめてくださいな。
ベッドの傍ら、壁沿いを歩いておられます。
こうなるともう、無事に出て行ってもらえるまで、片時も目を離すわけにはいきません。
クモ氏も、私がクモ氏を見つけた瞬間がわかったようで、一瞬 ビクッと されておりました。
お互いがお互いの動向に注視しているのがわかります。
〜近視で良かった。ボヤけたクモ氏なら、直視して見張っていられます。
さて、クモ氏は徐々に移動していき、少々軌道が上を向いています。
天井に行く気ですか、とハラハラする私。でも次第に気づきます。
外へと続く道がわかるのでしょうか、クモ氏は通気口に向かって進んでいます。
ちょっと すごい。ちょっと 尊敬しそうです。
そのまま見守っていると、やはり予測は的中、クモ氏は通気口のスキマへ するっと 消えて…
行った…
のです
が───。
なんとも非情ですね。
通気口の奥にあるフィルターは、あみあみがクモ氏の体よりも小さくて…
ゆえに、クモ氏は敢えなくUターン、再び部屋の壁に舞い戻ってきたのです。
もうクモ氏と暮らしていくしかないのでしょうか。
いいえ、無理です!!
キッ!!
意を決して、クモ氏と共同戦線です。
通気口のすぐ横にベランダの扉があります。
未だクモ氏は通気口近くで そわそわ うろうろ しています。
私はベランダの扉を少し開けました。そして、クモ氏が通りやすいようにカーテンをまとめました。
賢いクモ氏ですから、ここから外に出られると、必ず気づいてくれるはずです。
願いは通じました。
やにわに カーテンの影にクモ氏の姿が隠れたあと。
しばらくしてもクモ氏の姿がどこにも見えなかったので。。
閉まっている方の扉から、ベランダを覗き込みました。
ベランダ床にクモ氏が!
ぴたりとも動かず、こちらを見ています。
「出られたんか」
「出られたわ」
しかしそれは ほんの数秒。
クモ氏はすぐに くるり と向こうを向いて、どこかへ歩いていきました。
もう2度とお目にかかりませんように。。
ぴしゃり。
私はベランダの扉を閉めました。
はぁ〜
やれやれ でした。